うつの人への接し方 支える家族の方へ

 

このページはうつ患者を支援しておられる家族の方にむけて書かれています。

 

うつは当事者にとってとても辛いものですが、支える家族の方も接し方がわからなかったり、不安にとらわれてしまうことがあると思います。

 

うつ病の特徴のひとつは「わかりにくさ」です。

 

「良くなっているのか?それとも悪くなっているのか?」

 

「普段どおりに接すればいいのか?それとも配慮が必要なのか?」

 

接し方に迷う方が非常に多くおられます。

 

うつの方は以前とは違う「ものの言い方」をしたり、「やる気や責任感がないのでは?」と思わせる行動をとったりすることがあります。

 

たとえば下のようなケースです。

 

*今まで元気だったのに、急に「死にたい」と言いはじめた。

 

*病気になる前は優しい人だったのに、今は些細なことで怒ったりする。人が変わってしまったみたいだ。

 

*会社への通勤をはじめて「元気になったかな」と思ていたら、急に「会社を休む」と言い始めた。

 

*自分の好きな仕事は楽しそうにやっているのだけれど、苦手なことや面倒な仕事は避けて人にやらせようとする。

 

*もう長いこと治療しているが、良くならない。いつ治るのかがわからない

 

うつの治療中の方でさえ、「自分が良くなっているのか?それとも悪くなっているのか?」が自分自身でもわからなくなってしまうことはよくあることです。

 

ですから支える家族の方が接し方に迷ってしまうのも無理のないことなのです。

 

 

このページではうつの患者さんの気持ちや行動を理解するために、まずにうつの三つの特徴についてお話をさせてください。

 

*うつの家族の方が「死にたい」と言い始めたときは下のページの対応法を参考にしてください。

 

死にたいと言われたとき

 

うつの三つの特徴

 

それでは、「うつの方」の心理や行動を理解するための前提としてうつの特徴からお伝えしていきたいと思います。

 

三つのポイントを押さえてください。

 

ひとつは「持久力や集中力を使うためのエネルギーが低下している状態」になることです。

 

うつのリハビリ出勤中でしたら調子が良さそうに見えても、元気なときの6割から7割くらいしかエネルギーはないでしょう。

 

 

二つ目はは「症状に波があること」です。

 

 

うつ病のリハビリ中は比較的調子がよくて気分がいいときと気分が憂鬱で落ち込むときを交互に繰り返していきます。

 

こうした波を繰り返しながら回復に向かっていくのです。

 

ところで、周囲の家族の方や、会社の同僚の方たちは、うつの方が調子のいいときや元気にしている時の様子が印象にのこりがちです。

 

ところが本人は元気なときの6割前後のエネルギーで仕事や日常生活をこなしているわけですから、すぐに消耗してしまいます。

 

消耗してしまったところに「うつの波」が「気分の落ち込みの時期」が重なると、急激に症状が悪化したように見えるのです。

 

「昨日までは元気だったのに、今日になって急に会社を休みはじめた」

 

「具合が悪いというので会社を休んでいるのに、旅行に行ってしまった」

 

うつ当事者の行動や心理がいまひとつわかりにくいケースの場合、「本人のエネルギー不足」と「うつには波がある」ことを考え合わせれば理解もしやすいかと思います。

 

最後の三つ目は元気なときと比べて、思考や感情が変化してしまっていることです。

 

・明るくて朗らかだった人が将来の不安ばかり訴える。

 

・穏やかな人だったのに、今は些細なことで怒りを爆発させてしまう。

 

・急に過去のことを語りはじめ、昔のことを悔やむようになった。

 

こうした、「思考や感情の変化」はうつの症状であり、好ましくない言動や行動はうつの回復とともに消えていきます。

 

 

うつの方と会話する時のコツ

 

では以下に「うつ」の方と接する時のコツをあげておきます。

 

励ましてはいけない(本人の罪悪感を刺激しない。)

 

「うつ」の当事者は罪悪感にとらわれてしまうことがよくあります。

 

たとえば・・・・

 

「自分がいることで、家族(職場)に迷惑をかけている」

 

「ものごと(仕事)がうまくいかないのは自分が頑張っていないからだ」

 

「いつまでも治らないのは自分の気合いが足りないからだ」

 

このような人に「もっと頑張れ」とか「気合いで乗り切れ」といった言葉かけを行うと、本人がもともともっている罪悪感を増幅させてしまうことがあります。

 

たとえば「頑張れ」という声かけを行うと

 

「『頑張れ』と言われてしまうのはやはり自分が周囲に迷惑をかけてしまっているからだ」

 

「頑張ろうとしても気力がわかなくて頑張れない。頑張れない自分はダメな人間だ」

 

といった具合に感じることがあります。

 

また、回復の途上で無理に本人を頑張らせてしまうと、かえって回復を遅らせてしまうことがあります。

 

善意の一言が傷つけることがある

 

本人の調子がよさそうな時にも声掛けに気をかけてください。

 

たとえば・・・

 

「もうすっかり大丈夫だね」

 

「早くよくなれよ」

 

「だいぶ元気がでてきたね」

 

これらの言葉は通常であれば善意のひとことなのですが、こと「うつ」の当事者にとっては辛いことがあります。

 

繰り返しになりますが、再度書きます。

 

「うつ」の症状には波があり、今気分が良くても、一時間後には気分が落ち込んでいたりということがあります。気分の小波を繰り返しながら回復していきます。

うつの波がちょうど具合が悪くなってしまったとき、「だいぶ元気がでてきたね」という善意の一言がつらく感じられてしまうことがあるのです。

 

たとえば次のような声掛けを参考にしてください。

 

「だいぶ顔色もよくなってきたみたいだけれど、まだまだ無理をしないでね」

 

「ここまでよくなってきたのだから、焦らないで治していこうね」

 

 

接し方に迷った時には

 

上でいろいろと「お勧めできない声掛け」を紹介してしまったため、かえって声掛けの方法がわからなくなったり、身動きくなってしまう家族の方もおられるとおられると思います。

 

「本当はこう言いたいのだけれど、これは『禁句』なのだろうか」と迷うこともあると思います。

 

ではどうすればよいのでしょうか?

 

本人に聞いてみればよいのです。

 

「こういう時にはどう言ってあげたら一番楽なんだろう?」

 

「こういう言い方って辛く感じるかなあ?」

 

といった具合に素直に聞いてみてください。

 

しかしながら腫物にさわるような対応も実は「うつ」の当事者を苦しめてしまいます。

 

「本人に聞いてみる」という姿勢そのものは共感的なコミュニケーションになりえます

 

うつ状態に伴う「しがみつき」と「別人化」

 

この項はうつ患者と家族の間になんらかのトラブルが起きているケースについて述べていきます。

 

まず、最初に「うつに苦しむ人」の心理に焦点をあてて解説します。

 

うつになればかならずトラブルを起こすということではありません。
現状、問題なく過ごせている場合は安心していただいて大丈夫です。

 

うつ状態になると、言動や行動が別人のように変わることがあります。

 

今まで温厚だった人が怒りっぽくなって周囲に当たり散らす・・・

 

明朗で快活だった人がほとんど話をしなくなってしまう・・・

 

このようないわゆる「別人化」はうつの症状なのですが、このような「別人化」がおこるがゆえにさまざまな「問題行動」に結びつくことがあります。

 

下に例をあげます

 

過度な飲酒

 

インターネットの長時間使用

 

パチンコ等のギャンブルの依存

 

風俗通いや不倫など、異性関係の乱れ

 

リストカットなどの自傷行為

 

家族への暴言・暴力

 

これらの症状が必ず出るということではありません。今このようなことがなければ、それで大丈夫です

 

これらの行動が結局は自分のためにはならないということは、当事者もわかっているのだと思います。

 

しかしながら、うつの苦しみを一時忘れるために、どうしても手放せないのです。

 

結果的にうつが悪化し、苦しみが続くことになってしまうのに、です。

 

本人は「問題行動」にしがみつくことによって自分をギリギリのところで支えているという面があるのです

 

このような場合は、うつの治療を優先し、「問題行動」への対処は当人の回復を待ってからにしたほうが、遠回りに見えて案外うまくいくことがありあす。

 

また、うつが回復するにつれて、問題行動も消えていくということもよくあることなのです。

 

*もちろん、暴力と暴言だけはうけいれるべきではありません。暴力行為にさらされている方は一時的な退避なども検討しなくてはならないでしょう。

 

しかしながら、支える家族にはまた別の感情もあることも事実です。

 

うつ当事者の問題行動をどこまで許容するのか、そもそも許容しないのかは本当にケースバイケースです。

 

「うつ患者のすべてを受け入れるべき」という意見もあるようですが、私はそうは思いません。

 

支援する家族の立場が十分に守られなければ、うつの方を支えていくことが本当に苦しくなってしまうと思うのです。

 

 

支えるあなたへ

 

実は「うつに悩む本人」以上に「うつを支える家族の方」が疲弊してしまうことがよくあります。

 

誰かを支え続けることは非常にエネルギーのいることです。

 

「うつ」の当事者だけではなく、支える家族も非常に疲れるのです

 

あなた自身は大丈夫ですか?

 

言いたいことを我慢したり、いろいろなことに手を尽くしたりしていると負の感情も湧いてくることがあります。

 

*「もう長く患っている。本当に治るのだろうか?」

 

*「不安を繰り返し訴えてくる。話を聞くのも疲れてしまった」

 

*「人に甘えてばかりいないで、自分の事は自分でやってほしい」

 

*「ついカッとして、厳しい言葉をぶつけてしまった」

 

*「病気を経験して人が変わってしまったようだ。」

 

*「なぜ私がここまで世話を焼かねばならないのだろう?」

 

*「いろいろな手を尽くしているが、この人のために本当に役にたっているのだろうか?」

 

・「なかなか回復しないのは、私にも責任があるのではないか?」

 

・「うつになってしまったのは、私のせいではないのか?」

 

こうした負の感情に苦しみ、罪悪感を持たれる方もおられます。

 

でも、こうした感情が仮にあったとしてもそれは人として当たり前のものであり、正当なものだと思うのです。

 

そして辛い気持やしんどい状況を我慢することもありません。

 

辛いときは「辛い」と言っていいですし、しんどい時は人に助けを求めてもよいのです。

 

辛い気持ちや不安は、言葉にして語られることにより緩和していくことができます

 

また、うつ患者の日常生活に「なにか心配な事」がある場合、具体的なアドバイスを受ける機会も必要ではないでしょうか?

 

特にになんらかの問題行動がある場合はぜひご相談ください。

 

うつの症状はわかりづらく、また調子の波があるため、支える家族の方は不安に捉われがちです。

 

そのような方々を対象にして心の相談室りんどうは支える人を支えるカウンセリングを実施しています。

 

心の相談室りんどう  担当カウンセラー 馬場健一

 

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参考ページ

 

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うつ病の症状と発症の契機をご覧ください。

 

うつからの回復のプロセスについて

 

うつ病回復へのプロセスをご覧ください

 

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うつ病回復期の波〜リハビリ期の8つの注意事項をどうぞ

 

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死にたいと言われたときをどうぞ

 

 

参考文献  対人関係療法で治すうつ病  水島広子  創元社

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考サイト

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