不登校について

 

 

 

このコラムは不登校のお子さんをもつ親御さん向けに書かれています。

 

 

 

まずは子供を元気にすること

 

 

 

不登校をめぐる論議は本当に多岐に渡っています。

 

 

 

「今の学校には行く価値がない」といった類のものから、「何がなんでも甘やかさずに復学させなければならない」といったものまで様々ですね。

 

 

 

またいろいろな人に相談すると、人によっては正反対の意見がかえってきたりして、それが混乱のもとになったりもします。

 

 

 

「このままでは、子供が増長するばかりです。もっと厳しく躾けなければいけません」

 

 

 

「無理に学校に行かそうとしてはいけません。今はそっとしてあげてください。」

 

 

 

「お母さん、急ぎすぎです!」

 

 

 

「のんびり構えていてはいけません。もっといろいろな手を打たなければ!」

 

 

 

どのアドバイスもそれなりに正しく思えてくるものですし、ひとつひとつはそれなりに正論だったりするもので、だんだん対応の自信がなくなってきたりもするものです。

 

 

 

 

お子さんの心理状況がが今どのような状況なのか、そこを見極めてこそアドバイスは生きてきます。逆に今の心理状況を無視したうえで一般論としての正論を言ったりするから混乱を招くのです。

 

 

 

そもそも「学校に行かせる」VS「学校には行かなくてもいい」という、いわば大人の価値観を代替したような二極的な発想だけでは、なかなか目標が見えてきません。

 

 

 

そうではなくて「子供を元気にするにはどうすればいいか」「社会の中での子供の居場所をどうやって作ってあげるか」という視点で考えていけば支援の方法はおのずから見えてくるものだと思います。

 

 

 

私は学校には行ったほうがいいと思います。また行くための努力はあってもいいと思います。

 

 

 

ただし、エネルギーが低下している子供たちに無理じいはできないと考えていますし、またどうしても学校へ行けないならば、また別の方法で社会参加の方法を考えてもよいとも思っています。

 

 

 

そして、「学校に行けない」ことで悩んでいる子供たちは決して怠けているわけではない」ということは理解されていなければならないと思います。

 

 

 

 

子供たち自身も「学校へ行けるものなら行きたい」と思っているのです。また「学校に行けない自分」を責めてしまったりもしています

 

 

 

「安心と安全」を保障すること。そのうえで「社会への信頼感」をとりもどすこと

 

 

 

ちょっとした行き渋りは別にして登校時に腹痛を起こしたり、発熱したりするような状況であれば、無理に登校させるようなことはせずに、まずは休ませることが必要と思います。

 

 

 

ただし、単に休ませるだけではなく、親子の間のコミュニケーションを充実させていかなければなりません。

 

 

 

まずは安心を与え、保障することです。

 

 

 

「何があっても自分を認めてくれる」「自分の存在が肯定される」といった「安心感」の中で子供はエネルギーを蓄えていきます。

 

 

 

 

しかしながら、これがなかなか難しいものです。子供たちの態度も決して素直というわけではありませんし、親御さんにしてもついイライラをぶつけてしまったりするものですよね。

 

 

 

言いたいことを我慢したり、言葉をひとつひとつ選んでみたり・・・親御さんの苦労も相当なものだと思います。

 

 

また、子供たちの要求もすべて丸のみにすればいいというものでもありません。子供たちの行動を受容するにも「枠組み」というものを設定しなければなりません。まずは認めてはならないものをふたつあげておきます。

 

 

 

暴力の禁止

 

 

 

金銭的援助を無制限に与えることの禁止

 

 

 

どのタイミングで登校刺激を出すのか

 

 

 

子供さんにエネルギーが溜まってきたならば、「学校へ行こう」という誘い(登校刺激)はやはり必要と思います。

 

 

 

学校を休んでいる時間が長くなるにつれて、級友や先生への気兼ねから、なかなか自分から「学校に行く」とは言えなくなるものです。

 

 

 

また学校を休んでいるという事実そのものがお子さんの傷つき体験となっていることもあるからです。

 

 

登校刺激の「すべてが悪い」というのではなく、どのタイミングで登校刺激を出すのか、が問題なのだと思います。

 

 

登校刺激のコツをお伝えします

 

 

 

 

小さなテーマから「小出し」にすること

 

 

 

子供が嫌そうな顔をしたらすぐに引っ込めること。

 

また学校との連携をとることも大切です。

 

 

 

先生の家庭訪問によって登校への糸口をつかめる子もいますし、子供さんを学校へ迎えいれるための学校内での根回しも先生の協力なしにはなしえません。

 

 

 

不登校の始まりから回復までのプロセス

 

 

 

不登校のはじまりから社会復帰に至るまで、五つの状態を通過しながら回復に向かっていくことが知られています。

 

 

 

*これはさくら教育研究所の小澤美代子先生の一連の著作より学ばせていただきました。

 

 

 

これらの状態はそれぞれ「前兆期  初期  中期  後期  社会復帰」と呼ばれており、それぞれの時期に応じた子供さんへの対応を考えていきます。以下に具体的に述べていきます。

 

 

 

前兆期   行き渋りをはじめる時期 五月雨登校

 

 

 

       ↓
初期    様々な身体症状  混乱  不安  生活の乱れ

 

 

 

       ↓
中期    安定(膠着)  日常生活の復活

 

 

 

       ↓
後期    自己肯定  将来の話題

 

 

 

       ↓
社会復帰 復学  自立

 

 

 

 

 

 

まずは心身を安定させることを目標とする「初期」に登校刺激を与えてもうまくはいきません。

 

 

 

また活動をアシストしていくべき「後期」に何もせずに見守っているだけですと、お子さんが動き出すタイミングを逸してしまいます。

 

 

 

 

 

不登校と精神疾患の関係

 

 

 

不登校に苦しむこどもたちの一部分には「うつ」や「発達障害」を罹患しているケースもあります。たとえば好調だった学校の成績が急激に悪化したり、突然物事への意欲や興味を喪失してしまった場合にはその可能性があります。

 

 

 

休ませているにもかかわらず、本人の体調がなかなか戻ってこない場合は、このテストを参照しながら、医師の方に相談してみてもよいでしょう。

 

 

ただし、大人と違い子供は「うつ」との診断や通院に対して非常に過敏に反応し、大きな傷つきを経験することがあります。

 

 

 

本人を「きずもの」扱いしたりすることは厳に慎まなければなしません。

 

 

 

また、仮になんらかの疾患との診断が出たとしても「薬を飲ませてすべて解決」というわけでもありません。

 

 

 

親御さんの温かい気配りと思いやりが必須であることには変わりはないのです

 

 

 

何度も書いてきたとおり、お子さんを支援するのに、親御さんの力に勝るものはありません。

 

 

 

 

どんなに優秀な医師やカウンセラーでも、親御さんの愛情の力には決してかなわないのです。